【よくわかる! 加温加湿入門 Part2 】結露のお話し
結露の仕組みを理解する
湿度には絶対湿度と相対湿度の2つがあることを前回お話ししました。
相対湿度100%が飽和した状態で、もうこれ以上空気に水が溶け込むことができない!と言う状態でもあります。
では、溶け込むことができなのに、そこに水が存在していたらどうなるでしょう。
そう、余った水分が結露になるのです。
例えば密閉された1Lの牛乳瓶の中が37℃、相対湿度100%、絶対湿度44㎎で飽和した状態であったとしましょう。
この牛乳瓶を20℃に冷却していきます。
牛乳瓶は密閉された状態なので、空気の入れ換えもありませんし、水分の逃げ道もありません。
相対湿度は100%を維持したまま温度が下がっていきますが、
温度が下がると共に空気に溶け込むことのできる水分は減っていきます。
ですから、温度が20℃に下がる間に余った水分が出てきて、結露として牛乳瓶の内側にポツポツと水滴が付き始めます。
では、20℃まで下がるとどのくらいの水分が結露になるのでしょうか。
20℃、相対湿度100%の絶対湿度は17.4㎎/Lです。
と言うことは、37℃・相対湿度100%の絶対湿度は44㎎/Lですから、
44㎎-17.4㎎=26.6㎎が結露として発生するのです(図1)。
もう一つ結露のお話しをしましょう。
なぜコップに水滴が付くの? と言うお話です。
氷水の入ったコップを部屋に放置しておくと,コップの外側に水滴が付いてきます。
なぜ、コップに水滴が付くのでしょう。
部屋の温度が25℃で相対湿度が60%であったとしましょう。このときの絶対湿度は13.8mg/Lですね。
では,コップの外側付近の温度はどうなっているでしょう。
氷が 0 ℃なので,氷水の温度が2 ℃ぐらい。そして,コップ(外側)の温度が 5 ℃になっていたとしましょう。
コップの付近の空気の温度はというと、コップの温度によって冷やされていくのですね。
コップの付近の空気は温度が下がると共に、水分を取り込もうとします。
でも、溶け込むことのできる水分は、相対湿度100%までです。
コップの付近の空気の温度が5℃に冷やされたとすると、5℃の空気は、相対湿度100%、絶対湿度6.8㎎/ Lになります。
部屋の絶対湿度は13.8㎎/Lでしたから、13.8㎎/L―6.8㎎/L=7㎎/L分の水分が余るのです。
この余った水分が、コップに結露としてポツポツとついていくのですね(図2)。
寒い冬に、窓ガラスに結露が付くのもこれと同じ現象です。
寒い外の空気によって冷やされた窓ガラスが、部屋の暖かい水分のある空気を冷やし、
100%までは相対湿度は上がるけど、これ以上に温度が冷やされたら結露に変わるのですね。
でも、二重ガラスでは結露が付きません。
これは、二枚のガラスの間に空気(もしくは真空)があり、これが断熱材の役割をしているのですね。
空気は熱伝導率が低いので断熱作用があるのです。
ダウンジャケットを着ていると温かいのは、空気の層による断熱作用で、自分の体温が逃げていかないからです。
実際の医療現場では人工呼吸器の回路に結露があるか無いかで、患者さんに送られているガスの状態を知ることができます。
逆に言うと、結露がない時のガスは、相対湿度が0%なのか50%なのか、90%なのか分からないのです。
と言うことは、結露が確認できると患者さんに送気されているガスの相対湿度は100%に近い状態であることが分かるのです。
加温加湿器の実験をしていると、相対湿度が90%ぐらいになるもモヤっと曇ってきます。
一度付いた結露はなかなか消えていかなので、呼吸器の回路に結露が見えたら、
相対湿度は90%以上になっていると判断して良いでしょう。
呼吸器回路に結露が溜まると管理がしにくいし、結露が培地になり細菌やバクテリアが増えやすくなります。
だからと言って、呼吸器回路がカラカラなら良いということではないのです。
患者さんに必要な水分がどのくらい必要なのか。こんな話を次回からしていきましょう。
~この記事の執筆者~
松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。臨床工学技士。
小児専門病院で35年間勤務し、出産から新生児、急性期、慢性期、在宅、
ターミナル期すべての子供に関わった経験を持つ。
小児呼吸療法を中心としたセミナーを多く務める。著書多数。