基礎知識

【よくわかる!加温加湿器入門 part42】自動給水加温加湿チャンバーに使用する水には何を使用する?

今回は自動給水加温加湿チャンバーに使用する水は何が良いのかについて考えてみましょう。

加温加湿チャンバーに使用する水は、①滅菌蒸留水、②注射用水、③精製水の3つが使用できる水として挙げられます。

奇麗な水を使用するのが良いというのは誰もが知ることだと思います。過去に、加温加湿チャンバーにアルコール(消毒用エタノール)を入れてしまい、患者さんが亡くなるという痛ましい医療事故がありました。

この時の加温加湿チャンバーは自動給水タイプではなく、加温加湿チャンバーから呼吸器回路を外して水を注入するタイプでした。よって、使用されていたのは、瓶針が刺せる注射用水ではなく、蓋を回して開ける精製水でした。この精製水と似たボトルのアルコールも院内で使用されていました。

加温加湿チャンバーに精製水と間違えてアルコールを入れてしまったのです。水の沸点は100℃ですが、アルコールは78.37℃と揮発性の高い液体です。医療で使用される消毒用エタノールの濃度は70%で、非常に濃度が高いですから、お酒のアルコール以上に揮発性は高いのです。

よって、多量のアルコールが気管から肺に送られ、血液にアルコールが移動し、急性アルコール中毒になり患者さんは亡くなったと考えられます。ここで考えなければいけないのは、加温加湿器で使用する水は、病院で使用される消毒用エタノールや薬剤とは異なる管理をしなければいけないという事です。

  • 似た形のボトルや薬液バッグではないこと。
  • 保管する場所を差別化すること。

残念ながら、この病院では、消毒用エタノールと精製水は同じ場所に保管されていたということもトラブルの原因となっていました。では、皆さんの施設では、自動給水加温加湿器チャンバーの水に何を使用しているでしょうか。

自動給水ということは薬液ボトルのように瓶針が刺せる構造のボトルやバッグになります。そして、瓶針が刺せるものとしては、注射用水に限定されます。

注射用水には、500mlハードボトルのタイプがありますが、ハードボトルでは注射用水が減ると共にボトル内が空気で置換されていく必要があります。自動給水の瓶針の部分には空気をボトルに送るエアポートがあります。使用開始時にはエアポートの蓋を開ける必要がありますが、蓋の開け忘れにより、空気がボトルに入らず、水が滴下しなくなることがあります。

エアポートには綺麗な空気をボトルに引き込むために、フィルターが付いていますが、このフィルターが水で濡れてしまうと、空気を引き込みにくくなります。更に、エアポートから空気を引き込むためには、ボトル内が陰圧になる必要があります。

しかし、ハードボトルといっても、注射用水が減ると共にボトルが潰れてしまい、元の形に戻ろうとする力が働きにくいため、ボトル内に陰圧がかからず、空気の引き込みが起きないため、ある量までは注射用水が給水されますが、ボトルの潰れが限界になると、給水が止まってしまう事があります。よって、水の減りと共に潰れていくソフトボトルもしくはバッグのタイプを使用する方が安全です。

空気と置換する必要はないため、もしエアポートの蓋を開け忘れてもトラブルは起こりません。しかし、ソフトボトルやバッグのタイプの薬液が院内には多く存在しますので、これらと差別化する必要があります。

保管する場所を変えることはとても重要です。差別化する方法としては、1000mlのタイプを使用することもあります。大抵の薬液のボトルは大きくても500mlですから、1000mlの大きさの注射用水であれば、他の薬液と差別化できるので、間違いを起こすことが減ります。しかし、残念ながら、1000mlの生理食塩水という薬液が存在します。

透析などで使用されますが、直接、患者さんにこの生理食塩水を投与することは稀であると思います。よって、通常であれば差別化できると言っても良いと思います。1000mlの注射用水には、「単独点滴禁止」といった注意書きも記載されているので、間違いも減るのではと思います。もし、1000mlの生理食塩水を加温加湿チャンバーにつないでしまったらどうなるでしょう。

生理食塩水の沸点というのはありません。生理食塩水を加熱していくと、100℃で水の成分が沸点に達するため、気化していきます。そして、水の成分が全て気化すると、加温加湿チャンバーの底に塩の結晶が沈殿します。よって、もし生理食塩水を間違えて接続しても、加温加湿されるのは水の成分だけであるため、患者さんに塩分が送られることはありません。だからと言って、加温加湿チャンバーに注射用水以外の薬液をつなぐことはトラブルの元になりますので、間違えない様に管理する必要があります。

70L/分ものガスを流すハイフローセラピーでは、あっという間に水が無くなってしまうということもあるので、1000mlの量の注射用水を使用するメリットも多いのではと考えます。

今回は、加温加湿チャンバー、特に自動給水タイプで使用する水の選択について説明しました。

 

~この記事の執筆者~

松井 晃

KIDS CE ADVISORY代表。臨床工学技士。

小児専門病院で40年間勤務し、出産から新生児医療、急性期治療、慢性期医療、在宅医療、ターミナル期すべての子供に関わり、子供達から“病院のお父さん”と呼ばれる臨床工学技士。
小児呼吸療法を中心としたセミナー講師や大学の講師などを務める。著書多数。

>>KIDS CE ADVISORYのHPはこちら

 

 

 

 

関連記事

お気軽にご相談ください

電話番号:048-242-0333

加温加湿器.comは、医療関係者向けの加温加湿器に関する専門情報サイトです。特に人工呼吸器用加温加湿器とハイフローセラピー用加温加湿器に関する基礎知識から応用知識まで、より深くご理解頂く為のお役立情報をお届けします。