【よくわかる!加温加湿器入門 part36】結露の影響を考えてみよう④NPPVの結露をどう考える?
結露についての4回目です。
吸気回路の口元部分に結露があることが相対湿度を確認する上で非常に有効なポイントになります。絶対湿度より相対湿度を優先して、加温加湿器を設定することが重要です。
上記の2点は、上気道をバイパスする気管挿管による人工呼吸(IPPV)や気管切開部より気管チューブを挿入して行う人工呼吸(TPPV)の考え方になります。


では、上気道を通過させて換気を行う非侵襲的陽圧換気(NPPV)ではどう考えると良いでしょう。

NPPVの装置が日本に入ってきたのは1980年の後半になります。在宅用の人工呼吸器としてレスピロニクス社が製造したBiPAP®が輸入されてきて、人工呼吸管理の考え方が大きく変えた装置と言えるでしょう。NPPVがこの時まで行われていなかったか?というと、もっと以前からNPPVは行われていました。と言っても、IPPV用の人工呼吸器を使用して行っていました。蘇生や麻酔で使用されるフェイスマスクを顔に密着させてゴムのヘッドギアで装着するという方法でした。
IPPV用の人工呼吸器ですから、呼気弁を使用しますので、吸気回路と呼気回路の2本回路です。ベースフローやバイアスフローと呼ばれる呼気相に流れるガスがある人工呼吸器を使用すると多少のリークに対してであればPEEP(EPAP)を維持しやすくなります。 NPPVを行うということは自発呼吸があることが前提なので、自由に呼吸ができるように呼気相に流れるベースフローがある人工呼吸器を選択する必要があります。
とは言っても、現在使用されているNPPV専用の人工呼吸器のような多量のガスを流すことはできませんし、リーク補正機能もないので、なかなか難しい治療方法でした。
さて、1980年代後半にNPPV専用器が輸入されてきたときは、加温加湿は不要という触れ込みでしたので、営業マンが病院に持参してくるときに加温加湿器はありませんでした。なぜ加温・加湿が不要かというと、鼻や口を通過するので、人の持つ上気道があるからという理由でした。
私も、初期の患者さんには加温加湿器を使用していませんでしたが、風邪をひくと肺炎になってしまう患者さんがいたことから、外付けも加温加湿器(この時はフィッシャー&パイケル社のMR-630だったと思います)を使用することを決め、病院から加温加湿器を貸し出すという方法で加温・加湿を行ったところ、肺炎で入院を繰り返すことはありませんでした。
NPPVは医療者も体験しやすい人工呼吸器ですが、数分間の装着で喉が渇く感覚を感じるわけで、皆さんも加温加湿器は不要というのは無茶なことだということが分かるのではと思います。
その後、加温加湿器が一体化した在宅用のNPPV装置は開発されてきたのですが、吸気回路を温めるような機構はなく、吸気回路には結露が発生する状況でした。よって、NPPVでの加温・加湿は喉が潤う程度で良いという考えから、吸気回路に多量の結露が貯留するような加温加湿器の設定はしないのが通例です。
加温加湿器が一体になったNPPV装置の貯留槽も大きくなく、自動給水機能もないことから、この水の量で一晩分が足りる程度の加温・加湿レベルでの設定範囲になっています。
鼻や口を介するので、患者さんが違和感がなく、速やかにマスクを装着してくれることが良いので、潤う程度という考えは正しいと思います。熱いから、マスク装着してくれないと治療が進まないのは良くありません。病態によって、低温度から慣れて、徐々に加温・加湿の設定を上げていくことも必要かもしれません。
NPPVはQOLが上がるというのがメリットです。しかし、マスクに結露が大量に溜まるようなことは良質な睡眠がとれません。よって、吸気と呼気が混合され、乱流によって温度低下するとマスクに結露が生じますが、このマスクの結露も最小限に防ぐ必要があるとも考えます。
よって、送気するガスの温度は皮膚温の34℃程度が良いとされますが、相対湿度は80%程度あれば良いのかなと考えています。この相対湿度であれば吸気回路に結露ができませんし、マスク内での結露も少なく保てるのではと思います。QOLを上げる、維持することを先に考え、マスク装着を受け入れてくれる、潤う程度の吸気ガスに調整することが良いでしょう。
吸気回路にヒーターがないタイプであれば、吸気回路が冷やされるので、相対湿度は100%になりやすく、口元温度を34℃に維持するのは難しくなりますが、この様な呼吸器回路は、加温・加湿を低く抑えられる慢性期や在宅での患者さんに適応となるでしょう。
在宅でNPPVをさせる方は、あまり清潔な管理がされていないのが実際です。マスク式CPAPの患者さんも同じではと思いますが。呼吸器回路や貯水槽を定期的に洗うことについては指導はされていますが、実践されている患者さんはそう多くはありません。結露が多いと、呼吸器回路や貯水槽にはカビが発生しやすいので、この様な点から考えても、加温・加湿は抑えるのが良いのではと思います。この様な状況ですから、呼吸回路は少し乾燥気味に管理した方が良いという考えがあります。
しかし、急性期の呼吸管理でNPPVが使用される場合には、しっかりと加温・加湿が必要となりますので、吸気回路にヒーターが挿入されたタイプが使用できるNPPV装置を選択することや、外付けの加温加湿器を使用して、分泌物管理をすることが重要です。
今回は、NPPVにおける加温・加湿について説明しました。結露が必要と今まで多く述べてきましたが、NPPVのようなQOLを向上させる目的で使用する場合では、結露が嫌われ、装着を受け入れてくれないこともあるので、患者さんの希望を聞きながら、加温・加湿の調整をすることが必要でしょう。
患者さんの重症度に合わせて調整することも考えながら加温加湿器を使用していきましょう。
次回の連載も、お楽しみに。
~この記事の執筆者~

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。臨床工学技士。
小児専門病院で40年間勤務し、出産から新生児医療、急性期治療、慢性期医療、在宅医療、ターミナル期すべての子供に関わり、子供達から“病院のお父さん”と呼ばれる臨床工学技士。
小児呼吸療法を中心としたセミナー講師や大学の講師などを務める。著書多数。
