基礎知識

【よくわかる!加温加湿器入門 part35】結露の影響を考えてみよう③回路交換頻度を考える

  • 結露についての3回目です。

    呼吸器回路に付着する水滴は、ウイルスやバクテリアの培地になり、増殖することは以前に説明しました。ウイルスやバクテリアを呼吸器回路内に繁殖させないためには、呼吸器回路内を乾燥させるという考え方があります。できるだけ、呼吸器回路に結露ができない様に、吸気回路のヒーターワイヤーの挿入方法が変遷し、吸気回路の外側にヒーターワイヤーを巻き付けるようなタイプが開発されています。また、呼気回路にもヒーターワイヤーを挿入して、温めることで結露の発生を防ぐ呼吸器回路の開発もされてきました。

    呼吸器回路に結露が無ければ、ウイルスやバクテリアの繁殖を減らすことが出来ます。しかし、長々とこの連載では、呼吸器回路に結露が付かないような状態では、相対湿度が低いために、気管や肺胞から水分を奪うという作用が働き、分泌物が硬化してしまう事も伝えてきました。「吸気回路の口元近くには結露は必要であると考えています」という、基本のおさらいをしたところで、今回の話題に入っていきましょう。

    皆さんの施設では、呼吸器回路の交換はどのくらいの頻度で行っているでしょうか。昔は、リユーザブルの呼吸器回路が主流でした。そして、このころの回路交換の頻度は1週間というのが一般的でした。1週間で交換すれば、呼吸器回路は清潔に保たれると考えられていたからです。現在は、ディスポーザブルの呼吸器回路が主流になりました。この呼吸器回路の使用期間は2週間とされていることが多いです。この2週間というのを、2週間であれば、呼吸器回路は清潔に保たれると考えている方が多いです。

    しかし、この考え方は間違いです。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、呼吸器回路は汚れが確認されたら交換するとされています。また、日本集中治療医学会が出している「人工呼吸関連肺炎予防バンドル 2010改訂版 (略:VAPバンドル)」では、

    〇人工呼吸器回路を頻回に交換しない

    人工呼吸器回路を開放させると、回路内腔を通じた下気道汚染の危険性が高まる。定期的な回路交換は、VAP発生率を高くする。

    呼吸器回路の交換については

    (1) 回路は,患者毎に交換する。

    (2) 回路は、目に見える汚れや破損がある場合に交換する。

    (3) 定期的な回路交換を禁止するものではないが、7日未満での交換は推奨しない。 (4) 回路内にたまった水滴は、発見したとき、あるいは体位交換前に無菌的な手技で 除去する。

    上記のようになっています。 呼吸器回路の頻回な交換はしないとされ、考え方はCDCのガイドラインと同じです。なぜ、呼吸器回路の交換を頻回にしてはいけないのかというと、呼吸器回路を交換するのは、医療従事者という人が介入します。呼吸器回路交換の前にはしっかりと手指消毒することが推奨されますが、呼吸器回路は閉鎖回路ではなく、患者に接続される口元回路や人工呼吸器への接続部は開放されていて、外気や人の手などが触れる可能性があるのです。人の手が介入する呼吸器回路の交換は、一番の感染リスクを上昇させる要因となるのです。呼吸器回路の交換を行わなければ、人を介することが減るため、呼吸器回路の汚染が低下するのです。1週間で交換すれば清潔が維持される。呼吸器回路の製造会社は2週間使って大丈夫と言っている。この2つの考えは先ほども間違いと言いました。呼吸器回路は、組み立てた時点から清潔ではありません。

    また、患者に装着された時点で、患者が持っている常在菌や感染症の原因となっているウイルスやバクテリアが呼気から排気され、すぐに清潔な呼吸器回路ではなくなるのです。結露が無ければ培地とならずに、増殖が減らせることもありますが、1週間も2週間も清潔であるということではないのです。呼吸器回路の製造会社が記載している2週間とは、2週間であれば呼吸器回路の強度が保たれるということで、清潔度が維持されることを示したものではありません。清潔度を維持することを考えたら、毎日、清潔な方法で呼吸器回路を交換した方が良いという考え方にもなります。

    しかし、先ほども説明した通り、人が介入することが感染リスクの増加になるので、毎日の呼吸器回路の交換は良くないということになります。人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因は、人が介入することによる呼吸器回路へのウイルスやバクテリアの侵入であることが多いと考えるため、できる限り、呼吸器回路は交換しないで長期に使用しましょうという考えになるのです。

    でも、CDC呼吸器回路に汚れが確認されたら交換しましょうとしていますので、患者の分泌物が呼吸器回路に付着したことが確認されたら、1日目であっても交換しましょうという考え方にもなります。長く使えば良いという考えだけではないことを理解しておきましょう。

    現在、加温加湿器を使用する呼吸器回路では、加湿チャンバーが自動給水のタイプが多く使用されます。また、気管吸引も閉鎖式吸引回路が使用されるようになりました。更に、呼気回路にもヒーターワイヤーが挿入されたのでウォータートラップがない呼吸器回路も多くなっています。よって、患者に人工呼吸器が使用されていても、呼吸器回路が開放されることが少なくなりましたので、頻回な呼吸器回路の交換しなければウイルスやバクテリアが呼吸器回路内に入り難くなりました。したがって、CDCが提唱する呼吸器回路の交換は汚れが確認されたら行うということが、とても有効的に行える時代になりました。

    以前も書きましたが、MRSAが蔓延した時、加湿チャンバーの水にMRSAが増殖していたという原因も、人が介入したことが原因です。いくら、閉鎖的な呼吸器回路になったとしても、自動給水の水の交換時に、手指消毒をしなければ、感染リスクは上がりますので、標準予防策(スタンダードプリコーション)は患者に触れる時だけではなく、患者に繋がっている医療機器や医療デバイスに触れる時にも必要であるという事です。

    私は、呼吸器回路の交換は1ヵ月で良いと考えています。実際、1週間毎に交換していた時から、1ヵ月交換に変更する時に、CDCのガイドラインだけでなく、様々な文献をまとめて、感染委員会に提案を出しました。いきなり1ヵ月伸ばすのは危険だからと、2週間の交換で様子をみてからにしようという意見が多くありましたが、2週間毎の交換が、1週間交換や1ヵ月交換よりもVAPの発生頻度が高いという論文があったため、人の介入する頻度とウイルスやバクテリアの増殖率の関係で、2週間毎の交換は良くないという結果があることを説明し、1ヵ月毎の交換を認めてもらいました。1ヵ月交換にした後も、VAPが増えるという状況は確認できませんでした。(VAPのサーベイランスを取るのはとても難しいので、1週間毎の交換と比較していません。その前に、1週間毎の交換時にVAPと考えられる感染症はありませんでした。)

    皆さんの施設で行われている、2週間毎の交換というのは、感染リスクが大きいということになりますので、検討の余地があると思います。CDCのガイドラインの呼吸器回路交換について、最後に書いてあることは、呼吸器回路製造企業の使用期間を優先するという一言が書いてあります。ディスポーザブルの呼吸器回路が壊れずに使用できる期間として。呼吸器回路製造企業が2週間としていることが多いので、添付文書に書いてあることを考えると、この期間を守る必要もあります。しかし、在宅人工呼吸療法では、呼吸器回路の交換頻度は1ヵ月が当たり前に行われているので、1ヵ月で呼吸器回路が破損することは多くないと考えても良いと考えます。

    ということで、今回は、結露がウイルスやバクテリアの増殖の原因になるということから、呼吸器回路の交換頻度について説明しました。

    次回の連載も、お楽しみに。

    ~この記事の執筆者~

松井 晃

KIDS CE ADVISORY代表。臨床工学技士。

小児専門病院で40年間勤務し、出産から新生児医療、急性期治療、慢性期医療、在宅医療、ターミナル期すべての子供に関わり、子供達から“病院のお父さん”と呼ばれる臨床工学技士。
小児呼吸療法を中心としたセミナー講師や大学の講師などを務める。著書多数。

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