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【よくわかる!加温加湿器入門 part27】加温加湿器の設定⑤ HFOモード使用時②ダイレクト駆動方式人工呼吸器の場合   

 HFO換気モードにおける加温加湿器の設定についての3回目になります。

 前回は、メトラン社のピストン式HFOにおける加温・加湿の制御に関する説明をしました。

 今回は、ドレーゲル社のVN500VN600VN800新生児用人工呼吸器のHFOの制御法とHFOにおける加温加湿器の使用の注意点について説明します。

 ドレーゲル社のHFOの制御を図に示します。

                   NVシリーズのHFO換気

 設定された振動数(周波数)に合わせて、吸気側から高速サーボ弁を使ってパルス吸気フローを出します。吸気から流れる吸気流量は、設定された振幅(アンプリチュード)に合わせて変動します。HFOの最低の吸気流量は25L/分で、アンプリチュードが大きくなると40L/分まで増加します。ピストン式で流れる吸気ガスは10L/分程度で、アンプリチュードはピストンのストロークボリュームで作られますが、ドレーゲル社のHFOは流量パワーによってアンプリチュードが制御されるため、ピストン式よりも流量が多く、アンプリチュードによって変動します。

 呼気側には、ダイレクト駆動の高速呼気弁があり、吸気からのパルスフローに合わせて作動し、アンプリチュードを制御します。ドレーゲル社が初めてHFO機能を搭載してベビーログ8000では、パワーが低いためにHFOが使用できるのは1000g以下程度の低出生体重児でした。このパワーを改善するために、高速呼気弁の後に、外気方向にガスを流すベンチュリジェットを挿入することで、低大気圧を生成し、呼気を強制的に排気することで、HFOのパワーを上げました。

 HFOモードが搭載されるドレーゲル社の人工呼吸器は新生児用であるため、SIMVA/Cなどのコンベンショナルの換気モードでは、高流量ガスが流れることはなく、通常の加温加湿器で十分な加温・加湿効果を得ることが出来ます。しかし、HFOにおいては、最大で40L/分の吸気流量が流れるため、加温・加湿効果が低下する可能性があります。パスオーバー方式は高流量ガスにおいて加温・加湿性能が低下するのが特徴で、40L/分以上から加温・加湿効率が低下することを以前に説明しました。したがって、ドレーゲル社のHFOにおいては加湿不足になり、分泌物の硬化を起こしやすいと考えましょう。

 25L/分の吸気流量で制御される低アンプリチュードにおいては、ピストン式HFOのベースフロー10L/分よりも多いため、呼気の再呼吸が起こることは少ないと考えています。ピストン式HFOよりも呼吸器回路内のガスがフレッシュガスに置き換わりやすいということです。しかし、呼吸器回路内に乱流が発生することや、カフ無しの気管チューブが使用される新生児では、気管リークが発生するために、コンベンショナルの換気モードよりも加温・加湿効率は低下しやすく、呼吸器回路内の結露が見られないことがあります。よって、分泌物の硬化が起こりやすいため、コンベンショナルの換気モードより1段階、2段階高い加温加湿器の設定を筆者はしてきました。

 また、40L/分の吸気流量が流れる高アンプリチュードのHFOにおいては、さらに加温・加湿効率が低下し、呼吸器回路内の乱流、逆流などによって、温度センサーが測定する温度にも影響することで、加温加湿器が正常な制御ができず、低加湿の状態になることも考えられます。この様な場合では、コンベンショナルの換気モードより2段階、3段階高い加温加湿器の設定を筆者はしてきました。ドレーゲル社のHFOが使用される患者はNICUに入院する低出生体重児の肺保護に多く使用されます。未熟な肺胞にストレスを与えずに肺胞の成長を促す必要がある時期にHFOは画期的に作用しますが、長期的な人工呼吸管理においては慢性肺疾患(CLD)を発症させる原因になります。

 肺胞にストレスを与えずに肺胞の成長を促すためには、いかに気道や肺胞の状態を生理的に正常な状態に保つ必要があります。よって、換気モードだけではなく、適切な加温加湿器を使用し、適した設定を行うことがCLDの発症を減らすことに繋がると考えます。

使用されている環境や人工呼吸器の設定、呼吸器回路の違いなどによって、加温加湿器の設定は変わってきます。患者の分泌物の状態を常に確認しながら、状態に合わせて加温加湿器の設定を変更する必要があります。適した吸気ガスに設定するためには、口元温度と加湿チャンバーの出口温度を別々に設定できるHydraltis(ハイドラルティス)9500FM加温加湿器は効果的に使用できるのではと考えます。

 次回も、ピストン式ではないHFOにおける加温加湿器の使用方法について説明します。

 お楽しみに!

 

 

 

 

 

 

 

~この記事の執筆者~

松井 晃

KIDS CE ADVISORY代表。臨床工学技士。

小児専門病院で40年間勤務し、出産から新生児医療、急性期治療、慢性期医療、在宅医療、ターミナル期すべての子供に関わり、子供達から“病院のお父さん”と呼ばれる臨床工学技士。
小児呼吸療法を中心としたセミナー講師や大学の講師などを務める。著書多数。

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