人工呼吸器と加温加湿器について解説!
人工呼吸器とは
人工呼吸器は主に呼吸不全の患者へ使用されます。
人工呼吸器を使用する目的は、換気量を維持し血液中の二酸化炭素を正常値に保つことにあります。
努力性呼吸がある場合には呼吸仕事量を減らすことを目的に使用されます。
肺炎を起こすなど、肺胞の壁が固くなり上手く膨らまない場合には、酸素の取り入れも悪くなっているため、空気中の酸素(21%)より高い濃度の酸素と共に換気を行います。
人工呼吸器による換気は、陽圧で行われます(自発呼吸の肺内圧は陰圧です)。
自発呼吸を温存した人工呼吸管理が一般的で、自発呼吸と同調させる補助換気が行われます。
重症例では自発呼吸を停止した呼吸管理が行われるため100%の換気代行を行います。
人工呼吸が必要となるケースは、
- 呼吸中枢から呼吸の信号が出なくなり無呼吸になった場合。
- 呼吸の信号を伝える神経に障害が起こり正常な呼吸回数を維持できなくなった場合。
- 呼吸筋の異常で、正常な換気量を保てなくなった場合。
- 肺炎などで肺胞の壁が厚くなり自分の力では膨らませることができなくなった場合。
- 気道が閉塞や狭窄を起こし空気が通りにくくなった場合。
人工呼吸回路の構造
人工呼吸器は施設中央配管から供給される酸素と空気の駆動ガスを使い、
酸素濃度を調整されたガスを呼吸器回路を介して患者に送ります。
人工呼吸器はガスを吸うための弁と吐くための弁を持っていて、呼吸器回路を介してガスを送ります。
人工呼吸器には、マスク用(NPPV)と、挿管用(IPPV)があります。
マスク用は、マスクで鼻もしくは鼻と口を覆い、空気を送ることで呼吸管理を行います。
一方、挿管用は、気管チューブを口もしくは鼻より挿入、または気管切開口に気管切開チューブを挿管し、
空気を送り込むことで呼吸管理を行います。
加温加湿器とは
人工呼吸器は、自分で呼吸をすることができない患者様に代わり、
体の外から酸素濃度を調整されたガスを送る装置です。
人工呼吸器を動かすためには、施設の中央配管から供給される医療用の圧縮空気と酸素ガスを使用します。
これらのガスは乾燥状態であるため、そのままの状態で患者様に送気してしまうと、
乾燥ガスによって、気道の線毛運動低下や肺胞の損傷が発生します。
これにより分泌物が固まってしまい排泄できなくなり、無気肺や肺胞組織が壊れてしまい、
酸素の取り入れや二酸化炭素の吐き出しを悪くする恐れがあります。
また、気管チューブの狭窄、閉塞の原因にもなります。
そこで、乾燥ガスを送らないために、
加温加湿器を使用して乾燥したガスに湿度と温度を加えて人工呼吸を行います。
加温加湿の必要性
通常、鼻や口から吸われた空気は、
鼻腔(口腔)、咽頭、気道、気管分岐部を経て肺に導かれます。
鼻腔(口腔)、咽頭、気道は上気道と呼ばれ、
吸われた空気に湿度と温度を加える加温加湿の役割を持っています。
絶対湿度と相対湿度
空気中の湿度(=水分量)には決まりがあります。
含まれる水分量は、
絶対湿度(Absolute Humidity/AH)、相対湿度(relative humidity/RH)で表されます。
肺の中では 37℃ 100% RH、44mg/L AHの湿度量が必要なため、
加温加湿器はこの湿度を保つように使用されます。
通常、鼻や口から吸われた空気は、上気道(咽頭や喉頭、気道)を通り、肺に行きます。
上気道は、吸われた空気に湿度と温度を加える加温加湿の役割を持っています。
人工呼吸療法では、気管チューブや気管切開チューブを使用されると、
この上気道を経由しないで気管分岐部近傍まで直接乾燥したガスが送られてしまいます。
乾燥したガスが気管分岐部の手前に送気されると、気道の水分が奪われ、
気管粘膜の乾燥や損傷、線毛運動の低下、分泌物の乾燥や固形化、
分泌物による気管チューブ閉塞などを起こしてしまいます。
気管チューブや気管切開チューブなどが留置されていると、
加温加湿機能を果たす上気道がバイパスされ、乾燥したガスが加湿されずに肺に送られて弊害を起こしてしまうため、
加温加湿が必要となります。
吸気ガスが乾燥したまま送気されると気管粘膜を乾燥させ気管粘膜の損傷を起こし、
また分泌物が乾燥することにより分泌物の排泄が困難になり感染症の原因になります。
まとめ
気管チューブを介して行う人工呼吸療法では、送気されるガスが乾燥しているため、
予め体温に近い温度で相対湿度100%(絶対湿度約44mg/L)のガスにして送気する必要があります。
加温・加湿することで気管や肺を正常に保ち、呼吸療法を効果的にします。
そのため人工呼吸器と加温加湿器には密接な関係があります。